日本ビクターの国内テレビ事業からの撤退報道は、少なからずも大きな驚きを持って迎えられている、らしい。その後、日本ビクターから「憶測」である旨のコメントが発表されたものの、先日の東芝HD DVDのケースと同様、撤退は既定事実であるようだ。そもそも日本ビクターのテレビは昭和21年に「テレビの父」と呼ばれる高柳健次郎を迎え入れたのが出発点だ(高柳健次郎氏は世界で初めてブラウン管テレビを作り出した人物)。時代といってはそれまでだが、先月パイオニアが、まさにその方面での“パイオニア”であったはずのプラズマパネルの自社生産から撤退するというニュースもあった。一気に盛り上がったはずの薄型テレビへの波は、既に業界淘汰の時代に入ろうとしている。
ビクターの液晶テレビは決して評価は悪くなかった、と思う。
液晶テレビ特有の残像による映像のブレを、通常1秒間に60コマで表示している映像を倍の「120コマ」に増やして表示させるという、いわゆる倍速液晶技術をいち早く導入したその映像は、きれいさに定評があった。実際店頭で見ても、シャープやSONYや東芝と比較して決してひけを取るものではなく、むしろ優位に感じられたぐらいだ。それが、国内シェア第6位、しかも1位のシャープと大きく水を開けられていたとは。そのビクターよりシェアの低い、おいらの三菱も心配になってきた
そもそも、なぜシャープがこれほどまでにシェアを拡げられるのかが不思議。いや、決して悪くはないんだけれど、そこまで突出するほどの何かがあるとは思えない。考えられるのは「液晶はシャープ」というキャッチフレーズ。結構それだけで買っている人が多いんじゃないかな、今でも。かつては日本ビクターが「ビデオはビクター」というキャッチでVHSビデオを牽引した頃を考えたときに、「時代って皮肉だね」と思わずにいられない。
日本ビクターはDVDレコーダーで失敗している。開発・導入に乗り遅れた上、DVDとVHSの
3in1レコーダーに不具合が発生し、修理などの対応に追われ、ブランドイメージも失墜、ついにはビクター本体の業績が悪化した。ビクターは2006年2月を最後に、一般向けのDVDレコーダー商品を出していない。液晶テレビ業界をリードしているシャープ、SONY、東芝などが、テレビとレコーダーとのリンク機能を大きく打ち出しているのを考えたとき、このDVDレコーダーでの失敗も響いているのかもしれない。
それはそれとしても、専門誌上では評価の高かったビクターの液晶テレビの撤退。それは、良い商品が必ずしも残るわけではない時代となった、ということなのかもしれない。しかし、本当にそれでいいだろうか。効率性のみが声高に重視され、口先のうまい(広告のことです)業者が生き残る。効率性は中国からの食の不安を生み、与えられる情報のみを鵜呑みにすることから偽装が生まれたはずなのに。ユーザー思考、選択肢は多い方が・・・なんて言いながら、結果的にユーザーが寡占状態を作り出す。なんておバカな構図なんだろうか。
ビクターの液晶テレビは2月から発売されているLH905シリーズがある。ビクター製品愛好家も少なからずいるだろう。ビクター犬“ニッパー”は、蓄音機から聞こえてくる亡くなったご主人の声に耳を傾けているのだそうだ。もし今ニッパーがいたとしたら、高柳健次郎氏の声をどのように聞くのだろうか。


